原 佑介 / はら ゆうすけ

私は、日本近代文学をアジア諸地域とりわけ朝鮮半島との関連のなかでとらえなおす比較文学研究・ポストコロニアル研究をしています。これまでおもに、植民地朝鮮で生まれ育った日本人植民者二世の戦後文学を、在日朝鮮人文学や韓国近現代文学を参照しながら研究してきました。
日本近代文学といえば、一般的には夏目漱石や森鴎外、芥川龍之介など、国語教科書に載っている「国民作家」とその作品の系譜や相関図のようにイメージされます。しかし、かれらが生きた時代の日本は、台湾や朝鮮、満洲などを支配する多民族植民地帝国であり、かれら自身もそのような空間認識のなかで作品を書いていました。
日本近代文学は、戦争や植民地支配の暴力、あるいは異文化交流の驚きや喜びといった形で、つねに外とつながり、外にひらかれたものでした。また、植民地主義の観点から日本近代文学を学ぶことは、複雑な東アジア情勢や「歴史認識」問題、ヘイトスピーチ、さらには韓国ドラマ・K-POPの流行現象など、現代的な問題群に取り組むこととつながっています。こうしたことを意識しつつ、日本列島と朝鮮半島をひとつの視野に入れることを足がかりにして、日本近代文学をより広域的・現代的にとらえる研究を目指しています。

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