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二重学位で得た成果(丸井 貴史)

 日本文学を専攻している自分が中国に行っていったい何ができるのだろうと、大学院入学当時の指導教員に二重学位制度を利用しての留学を勧められたときは悩みました。結局、特に明確な目的もないまま中国に渡ったのですが、半年ほど経ったころ、江戸時代の小説に大きな影響を与えた『今古奇観』という中国小説の板本研究がこれまでほとんどなされていないことを知り、それからの半年は『今古奇観』の板本調査に力を注ぎました。最終的に、都賀庭鐘という江戸時代の小説家がこの作品をどのように利用したかということを明らかにするという、予想以上の成果を挙げることができましたが、これはおそらく、日本にいるだけでは不可能なことであったと思います。
また、二重学位制度を利用すると、中国の大学院生と同じ授業を履修することになります。戸惑うことも多くありますが、異なる文化的背景を持った同年代の学生とともに学ぶことで得ることのできるものはそれ以上に多くあります。そしてそれは必ずしも、学問的な事柄に限ったことではありません。
研究のための留学ですので、不安や重圧があるのは当然のことです。しかし、挑めば必ず何かが見つかります。私は今、江戸時代における中国文学の受容のあり方を今後の研究テーマにしようと考えていますが、それは中国にいるときに決めたことです。

  • 北京師範大学からの中間発表
  • 北京師範大学との学術交流

人間社会環境研究科 人間文化専攻 丸井 貴史

ダブルディグリィ取得を目指す後輩へ(玉源 あい)

中国へ出向いてからの学習状況を詳しく報告いたします。参考にしてください。

 私は金沢大学二重学位プログラムの留学生として中国北京師範大学の漢語文化学院に2012年2月13日から2013年1月11日まで一年間、言語学及び応用言語学専攻の対外漢語教学コースに在籍して研究致しました。同コースは外国人に中国語を教える教師を養成するコースで、私が目指している、日本で日本語を母国語としている学生を主に中国語を教授する教員として働くことを目標とし、且つ母国語の中国語に対するより深い分析と、日本人がわかりにくい中国語について更に深めるために「対外漢語教学コース」を選択しました。
2012年2月から6月までは春季学期で、2012年9月から2013年1月までは秋季学期の二学期制ですが私は1年先行の2011年度入学していた大学院生と一緒に春季の授業を開始し指定5科目すべて履修を終えることが出来ました。

  1. 対外漢語教学法
    担当教授盧華岩著の『対外漢語課堂教学行為的理論与実践』に基づき、理論及び実践から中国語の教授法を学習しました。 それらの模擬授業は3回実施して、先生と同級生から批評を受け、期末にはレポートと初級中国語の教案を作成・提出しました。
  2. 現代漢語詞彙専題研究
    単語の類義語分析、反義語分析、語彙の解釈についてプレゼンテーション3回の実施と期末試験を受けました。
  3. 中華伝統才芸
    書道・切り紙・太極拳を各6回受講しました。
    書道と切り紙については作品の提出、太極拳は実地試験を受けました。
  4. 応用言語学
    朱志平著の『漢語第二語言教学理論概要』に基づき、言語学理論、心理学理論及び教育学理論から第二言語としての中国語教育について受講しました。プレゼンテーション3回の実施と期末試験を受けました。
  5. 言語類型学
    Bernard Comrie著、沈家火宣訳『語言共性和語言類型』に基づき、世界の言語を類型の視点から研究しました。
    「使役構造」の内容を発表し、期末レポート「中国語・日本語における有差比較文の対照分析」を提出しました。

 2012年の9月から新学期が始まり、2012年度入学のカリキュラムと2011年度入学のカリキュラムを両方受講しました。秋季の科目は以下の通りです。

  1. 中国概況
    郭鵬著『中国概況』に基づき、一人ずつ順番に発表し、映画『孔子』と『建国大業』を鑑賞・討論を行いました。「中西初識と衝突」を発表しました。「近現代中国と西方文明」PPTの提出と期末試験を受けました。
  2. 語言与語言学習研究方法
    文秋芳著『応用語言学研究方法与論文写作』に基づき、修士論文の書き方について学習しました。修士論文のテーマ、構造、内容、目標などの発表、論文の中間発表の形式を提出、期末にまとめのレポートを提出しました。
  3. 中国文化概論
    6人の教授から「中国伝統文化と漢語国際教育」を受講しました。そのほか文化の実地考察を実施しました。「中国語教育における文化の教授」についての論文を提出しました。
  4. 漢語語法学
    1898年出版の『馬氏文通』から21世紀現在までの現代中国語文法研究史について学習しました。
    「程度範疇」に関する文法を発表し、期末試験を受けました。
  5. 心理語言学与対外漢語教学
    趙金銘主編『第二語言習得研究』に基づき、心理学の角度から中国語の習得順番、方法を研究しました。
    「第二語言習得研究的社会文化模式」を発表し、期末レポート「日本における中国語の語音教育」を提出しました。
  6. 文字詞彙学
    中国最古の部首別漢字字典『説文解字』に基づき、漢字の造字の理論を学習しました。
    『現代漢語詞典』第六版と第五版の対照分析、単語の教授法、漢字の教授法を3回発表し、期末試験を受けました。

 上記授業以外に、留学期間中に北京師範大学文学院や北京大学へ出向き中国本場で今まで著書等で名前を知っているだけだった中国語学会の著名な教授、学識者の方の直接に講義や講演を聞き強烈な感動・感銘を受けました。また中国人学生及び外国人留学生達と交流を深め切磋琢磨もでき、それらの経験は帰国後日本で更に研究を深めるためにおおいに役立てることができました。充実した一年間の留学生活の勉強を通じて、中国の大学における言語学、中国語文法の研究及び中国語教授法を全面的、系統的にマスター出来ました。二重学位のプログラムでは北京師範大学の修士学位を取得する条件としては32単位以上、中国語の学術論文を提出することです。私の場合は単位数は36単位取得し、論文については1月9日に修士論文の中間発表を終えてから、1月12日に帰国しました。2013年5月に北京師範大学に論文を提出、WEBで口頭試問を終え、6月に卒業しました。これからも留学で積み上げた知識・教育技術・課題を解決するべく智慧を日本での中国語教育に活用できると確信しております。

玉源あい

ダブルディグリィ履修生の生活

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