研究科長メッセージ
人類と人間社会の諸課題に応える
人間社会環境研究科の沿革
21世紀に入り既に四半世紀を迎えようとしています。世界は過去に例を見ないほど豊かになり、その富を享受する人々が増えた一方で人々はまた新たな課題に直面しています。地球温暖化に象徴されるように、地球の有限性をますます意識せざるを得ず、地球規模で自然環境を考える必要に迫られています。人間の創り上げてきた環境である社会も多くの問題をはらんでおり、経済や政治、法・制度のみならず、個人、家族、地域から自治体、国家、そして地球といった様々なレベルで問題を捉え、解決する視点が求められています。地震や津波、豪雨や干ばつをはじめとする自然災害ばかりでなく、原発事故や環境汚染、繰り返される事故や事件などによる人為災害、そして、戦争や紛争、飢餓と貧困、不公平と差別等々、私たちが解決すべき課題は山積しています。
社会の課題ばかりではありません。人類は長い歴史の中で自己を見つめ、人々との関わりを持ちながら文化を築いてきました。人々は日々生活するなかで様々な問題と向き合ってきましたが、科学や技術の高度に発達した現代にあっても人間関係や心の問題、価値や人生に関する容易には答えられない問題や疑問が数多く残されています。人類社会が直面する課題の解決に挑むとともに、現代社会における人間生活の諸問題を改めて見つめ直すことが求められています。そのためには、人文学、人間科学、社会科学の諸分野の課題を専門的に深め究めるとともに、場合によっては先端技術を応用しあるいは最新知識を利用し、自然科学や工学、医学などとも連携して研究をすすめる自由な学際的融合的視点が不可欠なことでしょう。
金沢大学大学院人間社会環境研究科は、それまでの3つの修士課程研究科(文学研究科、法学研究科、経済学研究科)を統合して博士前期課程とし、また独立研究科であった博士課程の社会環境科学研究科(1993年4月設置)を博士後期課程とすることで、区分制大学院として2006年4月に発足しました。
人間社会環境研究科は新しい時代における人間社会における問題解決と課題探究を目指す新しい組織です。本研究科において、皆さんが人間や社会の課題に果敢に挑戦し、新たな学問的発見や成果を挙げられることを期待しています。
学士教育に接続する4つの専攻-博士前期課程-
博士前期課程は、人文学専攻、経済学専攻、地域創造学専攻、国際学専攻の4専攻を設置しています。これらは、本学人間社会学域における学士課程6学類のうち、人文学類、経済学類、地域創造学類、国際学類の教育を継承する組織となっています。また、地域創造学専攻に設置されている教育支援開発学コースは学士課程の学校教育学類と密接に連携しています。取得できる学位は、修士(文学)、修士(経済学)、修士(経営学)、修士(地域創造学)、修士(国際学)、修士(学術)です。経済学専攻及び地域創造学専攻には、仕事を続けながら1年で学位を取得できる短期(1年)在学型制度も設けています。修了後の進路は博士後期課程への進学のほか、公務員や一般企業への就職なども例年みられます。
専門的かつ学際的研究を-博士後期課程-
本研究科の博士後期課程は人間社会環境学専攻の1専攻となっていますが、「人文学コース」「法学・政治学コース」「社会経済学コース」の3コースから構成されています。これらのコースは博士論文の審査の母体となるもので、多様な研究分野と多様なテーマにふさわしい研究指導を人間社会環境学という幅広い研究領域の下で行うための措置です。
博士後期課程の目標は、大学や国公立の研究所、民間シンクタンク等で研究や教育に携わる専門家や、企業・自治体等において専門的知識や研究的能力を求められる「高度専門職業人」の養成です。後期課程には前期課程からの進学者に加え、公務員・会社員などの社会人、さらに近年増えている留学生と、多彩な学生が机を並べています。取得できる学位は博士(社会環境学)、博士(文学)、博士(法学)、博士(政治学)、博士(経済学)、博士(学術) のいずれかです。学位取得後の進路は研究・教育職をはじめ、公務員や一般企業への就職と多様です。